はじめに

スピノザの著作である『知性改善論』について、『エチカ』を理解している前提で説明する。本論文を読む前に、「スピノザ『エチカ』の考察」に目を通してほしい。
『知性改善論』は、懐疑論者に向けて書かれた著作である。懐疑論者とは、善について一致することもできないし、ともに協力して何かをすることもできない。真の善を多くの者と一緒に実現することが目的のスピノザとしては1、このような者が、国家に多数いることは困るわけだ。そこでスピノザは、懐疑論者の知性を改善し、懐疑から解放することを試みるのである2


  1. そして、まさにそのような完全性に至る手立てとなりうるすべてのものこそが、真の善と呼ばれるのである。他方で最高の善とは、当人が、できれば他の諸個人とともに、そのような本性を享受するに至ることである。(第13節) 

  2. とはいえ、何よりも先に考え出されるべきなのは、知性がものどもを首尾よく、誤たずに、そしてできるだけ最良の仕方で理解することになるように知性を治療し、また許されるかぎりはじめのうちにそれを浄化する様式である。(第16節) 

真の観念 »