まとめ

最初に述べたように、『知性改善論』は未完に終わっている。未完に終わった理由についてはいろいろな解釈があるが、以下の遺作編集者の言葉の通り、「最後まで手を入れていたが、書ききる前に寿命が尽きてしまった」というのが真実なのだろうと思っている。

彼はつねにこの論考をととのえ、また仕上げるこころづもりでいました。しかし、彼は他の諸々の案件にさまたげられ、しまいには死によって攫われてしまったために、この仕事を意にかなうかたちで終結させることができませんでした。

『知性改善論』の叙述には、『エチカ』と重なり合う部分が多い。また、『知性改善論』が書かれた意図は明解であり、この書物を完成させることが不可能だとは思えない。ただ、『知性改善論』で行おうとしたことは、いわば『エチカ』を分析的方法で書き直すことであり、そこには膨大な時間と労力がかかることが予想される。このため、スピノザは『知性改善論』を一気に書き上げることができず、生きている間に完成させられなかったのではないかと思うのだ。


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