集会における行動
理想的な国家と腐敗した国家
集会は、国家の腐敗状態によって全く異なるものとなる。
理想的な国家においては、できるだけその状態を維持するよう心がけることが重要になる。
腐敗が軽度であれば、工夫によってそれを持ち直すことができるかもしれない。
腐敗しきった国家においては、個々の団体が多数派の形成を追求するのみであり、生産的な成果を生むことは難しい。
以下では、腐敗しきってない国家の集会において、心がけるべきことを考察する。
一般意志の強制
会議を理想的な状態に保つためには、特別な努力が必要である。一般意志を意識させるために、国家の利益と個別の利益が結びついていること、個々人の提供した労力と、全体が得た利益とが合一していることを、示し続ける必要があるわけだ。
ポイントの一つが、一般意志に関係のない議論を意図的に封じることだ。一般意志と関係のない議論をある者が行い、かつそれが見逃されれば、それを見た他の者が追随しうるからである。その場の発言だけで抑えたいのであれば、共通利害にまでさかのぼって事態を整理し、かつ相手の発言が一般意志に反することを示せばいい。「私達の一致点は共通の目的の実現である。この集会は、それを実現するにあたっての最善の方針を決めるためのものである。そこにおいて、○○という提起がなされ、それの妥当性について皆がもつ情報を出し合い、共有しているのが今の段階だ」「私達は、共通の利害に関係していると思っているから、他の者の発言を聞き、それを検討しているわけだ」「その目的に無関係な内容を聞くことについては、誰も一致していない。それとも君は、君の個人的な主張が我々全員の時間を奪うだけの価値があると本当に思っているのか」「今後は、「国家の最善を実現するためには」という枕詞をつけて話すようにしてくれ」「また発言の前に、それが本当に我々全体の共通利益に関係するものを検討し、考えをまとめてから発言をしてくれ」等と言えばいいだろう。長期的な効果を及ぼしたいのであれば、上記の内容の文書を作って、配布、掲示するといい。集会における具体的な発言を取り上げ、批判すれば、より効果的になるだろう。
議論を整理する者を置く
また、一般意志の理論に通じた者を議論の進行役として置き、議論を整理させるといいだろう。
立法の本質は、情報の差の解消により最善の方針を導くことである。だが、常に全員がこの本質に気づいているわけではない。また、記憶の脆弱性や、注意散漫により、既に述べられた議論を覚えておらず、既に述べられた主張を繰り返す場合もあるだろう。また、感情なり、個人的利害なり、単なる賛同表明なりの、情報という点では全く無意味な発言をする者もあるだろう。また、現在議論されているものとは全く別の提案を、思いつきで行う者もいるだろう。
そこで、これを是正する存在が必要になる。議論がある程度進行したら、それまでの議論を一般意志の理論に基づいて整理しなおす。既に出た情報についてはそれを指摘して打ち切る。感情や個人的利害等に関する発言については、それがここで話すべき内容ではないことを指摘して打ち切る。また、このような発言をした者に対して、ここで行っているのは全体の共通利害に関係する議論なのに、なぜこれまでの議論を把握していなかったり、関係のない話をするのか、君は一般意志に従う気があるのかと追及して、それ以上話を逸らす者が現れることを牽制する、というように。
形式論についての熟知
また、会議のシステム面について把握しておき、それが攻撃された場合に対処できるようにしておくといい。悪意、無知、思い込みにより、立法の場を踏まえずに何らかの決定を下す、集会を勝手に延期あるいは停止する、多数決を乱用する、勝手なルールを追加する、といったことがなされる場合があるからだ。特に多数決については、事前に整理しておかない限り、対抗することは難しいと思う。