デカルトの理論(定理一~五)
定理一~五は、デカルトの理論をベースにしている。
実体と様態
実体は本性上その変状に先立つ。(定理一)
デカルトが、実体と様態の区別について把握し、かつ実体が様態に先立つとしていることについては、デカルト - 神のア・プリオリな証明で見たとおりである。
属性間の関係
異なった属性を有する二つの実体は相互に共通点を有しない。(定理二)
相互に共通点を有しない物は、その一が他の原因たることができない。(定理三)
異なった属性を有する二つの実体とは、物体的実体と精神的実体のことである。
デカルトは、コギトの過程のあとに我について考察し、それが精神的実体であること、それが物体的実体とは全く異なることを見出した。従って、二つの実体は一切の共通点を有さないことも、一が他の原因にならないことも、デカルトは認めるわけだ。
区別の基準
異なる二つあるいは多数の物は実体の属性の相違によってか、そうでなければその変状の相違によってたがいに区別される。(定理四)
デカルトが直接認識しているのは、個々の様態と、それらが持つ属性のみである。実体は、直接認識されるものではなく、属性によって理解されるものだとしている。したがって、二つあるいは多数のものが互いに区別されるのであれば、それは必ず属性の相違か、あるいは変状の相違によるのである。
同一属性を持つ多数の実体はありえない
自然のうちには同一本性あるいは同一属性を有する二つあるいは多数の実体は存在しえない。(定理五)
デカルトにおいて、属性と実体は緊密に結びついている。精神的実体は思考属性と、物体的実体は延長属性と、というように。したがって、同一属性を持つ多数の実体はあり得ないことになる。
このように、デカルトの理論をベースにしている、ということを知っていたなら、定理一~五の理解は容易である。