スピノザ
スピノザは、デカルトの方法論を受け継いだ上で、デカルトを否定した哲学者である。
スピノザは、デカルトと同じ道をたどった後、決定論に至る。あるのは自然のみであり、精神はその一部でしかない。精神が独自の原理であるかのように見えるのは、それを動かしている原因について無知だからに過ぎない、と。
その上でデカルトを批判するのだが、その際スピノザは次のように考える。デカルトの弱点は、その神概念にある。デカルトが神に帰した「我と自然全体の上位に存在する」「我と自然全体を産出する」「両者の併存を可能にする」といった性質は、全く理解不能で曖昧なものでしかない、と。
そこで、まずデカルトの神を、デカルト自身の言葉を使って定義する。その上で、デカルトが神に帰した性質が矛盾を含むことを、デカルト自身の理論を根拠にして一つ一つ突きつけていく。つまり、デカルトが懐疑論者に対して用いた総合的方法を、スピノザはデカルトに対して用いるわけだ。そうして、万物は神のうちに含まれていること、精神もそのうちの一部でしかないことを証明する。これは、神という語を使ってはいるが、決定論と同じだ。ただ、「相手の用いる言葉と、相手の認める原理のみを用いて一致を積み重ねる」総合的方法を使ったために、デカルトが用いた「神」という言葉が残ってしまったのである。